こんにちは。
しろあとです。
今回の記事は書評シリーズ。
宮島未奈の『成瀬は天下を取りにいく』を読んでみました。
インフルエンサーがめっちゃ推していたので、気になって読んでみました。
一時期、本屋にいくとイチオシコーナーに必ずといっていいほど飾られていましたね。
話題の作品のひとつです。
物語のあらすじ
舞台は滋賀県大津市。
西武大津店が閉店することに決まったところから始まります。
作品は、14歳の主人公、成瀬あかりを中心に進んでいくのですが、この成瀬がだいぶ変わり者です。
話し方は断定口調で、融通が利かず、人の目を全く気にしない性格です。
クラスに一人はいたであろう堅物学級委員という言葉がぴったりの少女です。
作品のジャンルとしては、日常ほのぼの系といったところでしょうか。
この成瀬、傍若無人ぶりがすごいんです。
- けん玉大会に出る
- 百貨店の閉店カウントダウンTV中継に西武ライオンズのユニフォームを着て毎日映る
- M-1グランプリに出る
- 髪の毛を剃って坊主にし、人の髪の毛が1か月に1cm伸びるという話が本当なのか確かめる
- 競技カルタをはじめ、すぐに全国大会に出場
- 大会会場でナンパされた男子生徒と琵琶湖クルーズする
- 琵琶湖に入水自殺しようとしている男性を体当たりで止める
ぱっと思いつくだけで、これだけの奇怪さです。
※この先、ネタバレを含みます
【読後所感】
最後まで成瀬のぶっ飛びっぷりを楽しめました。
成瀬の中学の同級生である島崎、大貫の2人がいるのですが、絶妙な距離感で成瀬を傍観していきます。
この距離感がなんとも小気味よく、彼女らの供述や考えをもとにストーリーの詳細や成瀬の人物像がより明確になっていきます。
大貫より島崎のほうが、より成瀬に深入りします。
実際、成瀬の相方としてM-1グランプリ出場したのは島崎です。
2人は地元の膳所(ぜぜ)という地名をとって、「ゼゼカラ」というコンビを結成し、ネタ作りに励みます。
この漫才が意外にも面白い。
地元、大津のローカルネタをふんだんに入れた、正統派のボケとツッコミの漫才。
本という活字体を通しても面白さがありました。
島崎は成瀬と違う高校に進学するのですが、代わりに成瀬と同じクラスになったのが同じ中学の大貫なのです。
大貫は島崎ほど成瀬との絡みが多くありません。
が、意外なところで成瀬と意気投合する場面があるのです。
大貫はふとしたきっかけから東大を目指すことになります。
東大のオープンキャンパスに、同級生男子と一緒に行くことになります。
東大のキャンパスを歩いていると、見たことある女が。
成瀬です。
成瀬も東大のオープンキャンパスに来ていたのです。
たしかに成瀬は学年トップの成績ですが、まさか来ていたとは。
成瀬は大貫をある場所に誘い出そうとします。
正直、大貫は成瀬と仲良しというわけではなく、変わり者を遠目から楽しんでいる立場であったため、成瀬と懇意にする気はそれほどありません。
断りたいところですが、成瀬が誘い出した場所は、池袋。
そう、あの「SEIBU」がある池袋です。
今はなき西武大津店、それと同じ西武が池袋にあるのです。
これは成瀬と大貫にとっては垂涎ものですよね。
東大キャンパスを2人は抜け出します。
この間、大貫の連れの同級生男子は一人でオープンキャンパス中です。
池袋に着いた成瀬と大貫は、西武を見て驚愕します。
「西武大津店よりもデカい!!」
2人はなんと西武をバックに写真撮影を始めます。
あんなところで写真撮影する人なんていないですよね。
想像したらめっちゃ笑えてきます。
それくらい大津市民にとって、西武というのは思い出深いものなんでしょうね。
物語は、成瀬が高3の18歳まで続きます。
ラストは「ゼゼカラ」の漫才で終わります。
印象的だったのが、まるでロボットのような成瀬が、最後の最後に人間味があらわれてくるところです。
大学進学のため、離れ離れになるゼゼカラメンバーは解散の危機に陥ります。
このとき、成瀬はゼゼカラとして活動できない苦悩をあらわにするのです。
本作のクライマックスともいえるラスト場面です。
成瀬にも人とのつながりを求めたり、寂しいという感情を持ったりするんだなと思いました。
本作は、すごい伏線があったり、手に汗握る展開があったりするわけではありませんが、1人のぶっとんだ人間やその人間関係模様を楽しめる作品です。
まだまだ人気の作品ですので、機会があれば読んでみてください。
しろあと
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