メンタル休職からの職場復帰

思考・習慣

こんにちは。

しろあとです。

先日、仕事関係で精神保健福祉の研修を受講してきました。

その研修の内容はメンタル不調による休職から、いかに職場復帰するかというものです。

かなりニッチな内容で、あまり見かけないタイトルですよね。

思わず興味を惹かれます。

今回は、私が研修から得てきた知見や考えを、幅広く共有できればと思います。

研修講師は、産業医を務め、職場復帰支援に携わってきた精神科専門医の方でした。

その道、30年以上の温和な男性医師です。

私の身勝手な偏見ですが、精神科医の先生はどことなく変人で、社会不適応なイメージがありました。

ただ講師を務めた医師は、そんなイメージを払拭するような常識人です。

温和な雰囲気満載で、思わずなんでも話したくなるような人でした。

EAP(従業員支援プログラム)

働く人のメンタル休職からの復帰において、まず核となる中心的な概念がEAP(Employee assistance program)です。

EAPとは、企業や組織に属する従業員や、その家族に対する総合的なカウンセリングサービスのことです。

個人ではなく、企業が外部の専門機関と契約する体制をとる福利厚生制度です。

なぜEAPが重要かというと、問題を抱えた従業員を休職や退職させるよりも、予防や早期治療をしたほうが、本人や家族、企業としてもメリットが大きいからです。

たとえば、社歴20年目の人が休職・退職することになったとしましょう。

1つの会社において20年もの歳月が過ごしてきたわけですから、相当量の知識や経験を持っていることでしょう。

そんな主力人材が主戦場から離れるとなると、企業は痛手です。

代替人材を用意するとしても、別の部署から引っ張ってくるか、人事にかけあって経験者を採用するか、未経験人材を一から育てるかくらいしか方法はありません。

しかしこれらどの方法をとっても、非効率的であり、成功の確信はありません。

そうではなくて、休職や退職に追い込まれる前に手を打っておくことの重要性を、EAPは問うています。

アメリカではトップ企業の9割は、すでにEAPを導入しています。

一方、日本では2023年の統計で、約35.8%にとどまります。

従業員1000人以上の企業では、100%の導入率ですが、規模が小さくなると導入率はグッと下がるようです。

EAPは企業と企業の契約になります。

契約金は年200万円が相場らしいです。

メンタル疾患はなぜ増えているのか

研修講師の所感ではありますが、メンタル疾患が増えている要因として、情報の量と流れるスピードが、人間の処理できる限界を超えてきていることを提言しています。

  • ネットでつながるボーダーレス社会
  • 生活の24時間化
  • 生活のグローバル化
  • 生活のスピード化と効率化
  • 「休むことは悪」と感じる国民性

これらが関係しているのではないかと推測されていました。

じっくりと考えることができてなくなっているとのことです。

しかし一方では、相談する敷居が下がったことで、メンタル疾患と診断される人が増えたとも提言しています。

これまでだったら見過ごされていた潜在的なメンタル不調者に光を当てたことで、患者が増えたように見えるとのことです。

うつとは

うつ状態とは、心身のエネルギーが低下し、抑うつ気分を主とするさまざまな心身の不調を示す状態のことです。

ちなみに、うつ状態とうつ病は明確に区別されます。

うつ状態が見られる病気として、

  • 適応障害
  • うつ病
  • 双極Ⅱ型障害のうつ期
  • 発達障害の二次障害
  • アルコール多飲

があるとされています。

うつ病は、古典的うつ病と現代型うつ病の2つに大別されています。

古典的うつ病とは従来からみられるうつ病で、真面目で気を遣える性格の人がかかりやすいうつ病です。

責任感が強いため、なにごとも自分のせいにする自己犠牲型です。

現代型うつ病とは、まさに若者といった具合で、他貴型な性格です。

一見すると適応障害っぽさが見受けられます。

古典型が「うつになったのは自分が弱いからだ」と自分を責めているのに対し、現代型は「うつになったのは会社や同僚のせいだ」と人や環境のせいにしがちです。

そのため現代型うつ病は、仕事や職場から離れると途端に快調です。

ゆえに適応障害っぽさも合わせもっているといえます。

双極性障害には、双極Ⅰ型障害と双極Ⅱ型障害があります。

Ⅰ型が重い躁と重いうつが明確にみられるのに対し、Ⅱ型は軽い躁と軽いうつを頻繁に繰り返すのが特徴です。

発達障害者は、発達の偏り自体が問題になるというよりも、症状によって人から疎まれたり反感を買ったりする経験をたびたび繰り返すことで、自己肯定感やエネルギーを損ない、うつ状態になりやすいとされています。

身近ところでは、アルコールの多飲が問題です。

アルコールはうつの原因物質とされているようです。

仕事に出られない状態が続くようであれば、うつ状態が原因であることがほとんどです。

うつ状態になることは、人間にとって一見するとよくないように思えますが、見方によってはメリットもあります。

まず不安の感情は、未来の脅威に対して、「よく見ろ」というサインになります。

そして怒りの感情は、現在の脅威に対して、「守れ」というサインになります。

うつ状態になるということは、これまでの活動をすべて一時停止して見直し、古い考えや習慣を捨て、新たな行動を始めるという意味があります。

うつになることは、自分を変えようとしているのです。

業務起因性うつ病

業務起因性うつ病とは、仕事が原因でうつ病を発症した状態のことです。

あまりにも強い負荷が原因で精神疾患が発症した場合には、労災と認められることもあります。

職場の2大ストレスとしてあげられるのは、仕事の内容自体(仕事量、仕事の要求度、長時間労働等)と、人間関係です。

ストレスが高まるきっかけとして、

  • 業務の変更・増加・難易度が上がる
  • 上司・同僚・部下との関係変化
  • 家庭の事情で仕事に集中できない

などがあります。

職場における諸問題がうまく解決されない状態が続くと、欲求不満がエスカレートしていき、脳疲労、心身機能の全般的な低下、注意集中力の欠如につながり、近いうちにいずれ休職する運びとなります。

休職者の8割は、仕事の業務が絡んでいるといって差し支えありません。

パワハラの類型

では休職にまで追い込まれる原因として、何があるでしょうか。

ベースには先にみたような長時間労働や人間関係の問題がありますが、さらに突き詰めるとパワハラに行きつきます。

パワハラは大きく6つの類型があります。

・身体的な攻撃

暴行や傷害などがあてはまります。

・精神的な攻撃

脅迫や名誉棄損、侮辱などがあてはまります。

・人間関係遮断

隔離、仲間外し、無視などがあてはまります。

・過大な要求

明らかに不可能なこと強制させる、無理難題を吹っ掛けるなどがあてはまります。

・過小な要求

能力やスキルとかけ離れた程度の低い仕事をさせる、仕事を与えないなどがあてはまります。

何もさせないというのも、パワハラにあたります。

・プライベート干渉

本来業務と関係ない私的領域に立ち入ることがあてはまります。

うつの治療段階

もしうつ病に罹患した場合、療養することになります。

うつ病の回復には3段階あり、初期(治療期)、中期(回復期)、後期(復職準備期)にそれぞれ分けられます。

初期(治療期)は、疲労した脳をとにかく休めることが大事な時期です。

寝たいだけ寝ることで心身の修復を図ることが優先されます。

うつ病に罹患すると、「規則正しい生活を心がけるように」といわれることが多いですが、本筋ではありません。

仕事をして規則正しい生活をしていたはずなのに心身が故障したのですから、規則正しさよりもまずは休養を優先させる必要があるのです。

1日10時間でも20時間でも、寝たいだけ寝ることが大事になってきます。

いい意味でダラダラと、ボケっと過ごすのがポイントです。

過去のことをくよくよと思い起こす反芻思考が回復の足かせになります。

過去を引きづらずに、いかに早く開き直れるかの勝負になります。

もちろん仕事に関する情報や刺激は、完全にシャットダウンします。

重要な決断はできる状態ではないので、ひとまず先送りします。

真面目な人はこの先送りが難しいため、課題になるでしょう。

中期(回復期)からは、身体のリハビリを行います。

ここで始めて規則正しい生活を送る、可能な範囲で身体を動かすことが大事になります。

自身の身体が発するサインを逃さず、きちんと捉えることに主眼が置かれます。

生活記録表をつけると、より客観的に自身を見つめ直すことができます。

翌日に疲れが残ったら、動き過ぎのサインです。

運動を増やすのはいいですが、しっかりコントロールする感覚を持ちましょう。

後期(復職準備期)から、脳の機能を本格的に高める活動を始めます。

うつ病再発を防ぐためにできる取り組みや計画を練っていく段階です。

つまり、活動量や行動範囲を増やし、毎日動くことが必要になります。

具体的には、図書館やカフェに通ってみる模擬出勤、職場の近くまで赴いてみる、通勤のシミュレーション、復職支援プログラムの活用、会社に復職意向を伝えるなどです。

リワーク

研修でことさら強調されていたのは、リワークがとても大切であるということです。

リワークとは、Return to Workの略です。

精神疾患などが原因で休職中の従業員が、スムーズに職場復帰できるように支援するリハビリテーションプログラムです。

このリワークですが、リワークに通うと予後がよいとのデータがあります。

復職後の就労継続状況を比較してみると、復職1年後に継続して就業している人はリワーク有が80%強、リワーク無が60%強です。

さらに復職2年後を比較すると、リワーク有が80%弱、リワーク無が30%弱です。

リワーク無いまま2年経つと、7割以上が再び休職に追いやられるという事実は驚愕です。

リワークは、再発しないための勉強期間であるといえます。

その内容は、健康的な生活習慣を取り戻すための取り組みです。

疾病や薬に対する正しい知識、コミュニケーション法、リラクゼーション法、ストレス対処法、集中を要する作業訓練、プレゼンテーション技法などを幅広く学びます。

期間と頻度は、1か月から1年、週2~6日、1回あたり半日か1日、場合によっては夜間まで行われることもあります。

リハビリ出勤(試し出勤)

リハビリ出勤とは、休職した従業員がいきなりフルタイムで働くのではなく、復職前に短時間だけ働く制度です。

就労可能な状態かを確認する意味合いです。

会社側は観察期間になり、従業員側は慣らしの期間になります。

リハビリ出勤期間は1、2か月くらいが相場です。

リワーク利用者はリハビリ出勤を早く終え、より短期で復帰可能になるケースが多いです。

ポイントは責任を持たせず、軽めの仕事から始めることです。

上から受けた指示を淡々とこなす系の仕事が向いています。

この段階で決定権を与えたり、意思決定をさせたりすると、途端に責任が生じてうまく復職につながりません。

上司や周囲の理解も求められます。

復職を成功させるには、段階的である必要があります。

リハビリ出勤の前に、必ず職場に顔を出しておくとよいとされています。

その際には職場で目立つことを避けます。

大勢の前で挨拶なんてしようものなら、その居心地の悪さに仕事復帰したいと思えなくなってしまいます。

夕方などのあまり人がいないような目立たない時間帯に寄ることが推奨されます。

また、週初めの月曜から出勤するのも避けます。

いきなり5連勤は、あまりにもハードルが高すぎます。

週の半ばから始め、すぐに休日がやってくるような体制をあらかじめ作る工夫が求められます。

復職後の心身変化

無事に復職したのも束の間、心身にはさまざまは刺激や影響が与えられ、疲労感が強まります。

最初の1週間目は身体の疲れ、気疲れが強く出ます。

雰囲気に慣れることがとにかく大事です。

決められた勤務時間を守り、半日でもいいから毎日出勤する習慣がつけられると最高です。

1か月経つと、一応慣れて大丈夫になります。

3か月経つと、業務にも社内風土にもだいたなじむようになってきます。

6か月経つと、ほぼ元の状態に戻ります。

完全に元の調子に戻るには、さらに1年はかかるとされており、復職前のパフォーマンスを取り戻すには、どんなにうまく行っても1年半はかかる見込みです。

五感を意識したストレス対処法

メンタルケアは五感を意識すると効果的です。

美しい景色を眺める視覚、音楽や自然音に耳を傾ける聴覚、ご飯やお菓子を楽しむ味覚、フレグランスや香水など楽しむ嗅覚、ペットを撫でたり心地よい肌触りの寝具を使ったりする触覚。

ただ好きなこと、嫌なことを忘れられる趣味やストレス解消法をするのもよいですが、さらに五感を意識できるとより効果的です。

まとめと所感

今回のメンタル休職からの復帰研修で、私が一番印象に残ったことがリワークの可能性です。

リワークという言葉を耳にしたことはありましたが、実際に何がどのように行われ、どんな効果があるのかは知りませんでした。

2年後の就業継続状況はまさに驚きで、リワークを利用すると再度休職になるリスクが大幅に激減するのは大きな学びでした。

反対にいえば、リワークを利用せずに何となく復職した人は、その後ほとんどが再び休職に陥るということです。

これではメンタル休職者が世間から穿った目でみられるのも、当然といわざるをえません。

一度メンタルを病んだらどうせ繰り返すだろう、結局使えない会社のお荷物だ、と思われることもあるかもしれません。

このあたりの見方や考え方は、さらに議論が必要だと感じました。

またEAPというシステムにも興味をひかれました。

大所帯の会社では導入されているところがほとんどですが、やはり利用するにはハードルが高いように思えます。

仮に自分が利用できるような立場だとしても、結局利用しないかなと感じました。

やはりまだまだ知られていませんし、不透明であるということでしょう。

メンタル疾患は長い間、偏見の目で晒されてきましたし、これからもそういう目でみられることでしょう。

メンタルを治療するのではなく、予防するという視点はとても大事だと感じました。

しろあと

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